バイオマス

バイオマス発電のメリット・デメリットとは?事例付きで徹底解説

バイオマス発電は、木材や動植物の廃棄物といった生物由来の資源を活用し、廃棄物削減や持続可能な資源利用を可能にする再生可能エネルギーの1つです。発電コストや資源の安定供給といったデメリットがある一方、本来なら廃棄するものを再活用できるため、注目が集まっています。

この記事では、バイオマス発電の基本的な仕組み、メリットとデメリット、具体的な活用事例を分かりやすく解説します。再エネ調達やエネルギーコスト削減のために、バイオマス発電の導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

1. バイオマス発電とは?簡単に解説

バイオマス発電とは、木材や動物・植物などの生物由来の資源である「バイオマス」を燃料として利用し、発電の際のエネルギー源として活用する発電方法のことです。

バイオマス発電に利用される生物資源にはさまざまなものがあり、木くずや建築廃材、畜産業で生じる動物のフン、農業で生じた収穫後に残った葉や茎などが該当します。通常であれば廃棄処分となる資源を有効活用できる上に、原料の生産が持続的であることから、再生可能エネルギー発電の1つとして近年注目を集めています。

 

1-1. バイオマス発電の仕組み

バイオマス発電には大きく分けて3種類の発電システムがあります。ここでは、バイオマス発電における3種類の発電の仕組みについて確認しましょう。

直接燃焼方式木くずや端材、生ごみなどの可燃ごみといった生物資源を、直接燃やして発電する方法です。バイオマス燃料を燃やすことでボイラーを加熱し、蒸気でタービンを回して電気エネルギーを作り出します。
熱分解ガス化方式生物資源を高温で熱処理することで生じる可燃性ガスを燃やし、その排気でガスタービンを回して電気エネルギーを作り出す方法です。食品工場などから出る食品廃棄物も燃料として利用されています。
生物化学的ガス化方式生物資源を微生物によるメタン発酵などを通してガス化し、ガスタービンを回して電気を作る方法です。家畜の排出物(排泄物)や生ごみ、下水汚泥などのバイオマス資源が用いられており、発酵後の残りかすは肥料としても活用できます。

直接燃焼方式は燃料の持ち運びがしやすく、熱分解ガス化方式は小さい設備で一定の発電効率を得られるといった特徴があります。生物化学的ガス化方式では燃えやすいメタンガス(バイオメタン)が主に発生するため、より効率的に発電できることも押さえておきましょう。

 

2. バイオマス発電のメリット

近年では、地球温暖化への対策や循環型社会の実現に向けた取り組みが世界的に行われており、バイオマス発電も環境負荷が小さく持続可能性が高い発電方法として注目を集めています。ここでは、バイオマス発電における主なメリットについて解説します。

 

2-1. カーボンニュートラルな発電方法である

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという考え方のことを指します。二酸化炭素などの排出がある場合は、その量と同じ量の二酸化炭素を吸収・除去することで差し引きゼロと考えることが可能です。

バイオマス発電では発電時に二酸化炭素が排出されますが、燃料となった植物が生育中に光合成の働きで吸収した二酸化炭素の量と相殺できます。発電時には一定の量の二酸化炭素が排出されるものの、火力発電などと比較すると、温室効果ガスの削減につながるカーボンニュートラルな発電方法です。

 

2-2. 廃棄物を活用して発電できる

バイオマス発電では、建築廃材や生ごみ、動物の排出物などがエネルギー源として活用されていますが、これらの多くは、本来であれば産業廃棄物として処理されます。廃棄物を処理するには、相応のエネルギーが必要であり、コストや手間もかかります。

バイオマス発電では、これらの廃棄物がエネルギー資源となるため、廃棄処理しなければならない廃棄物の量を削減することが可能です。エネルギーや資源を有効利用できるという点で、循環型社会の実現に寄与する発電方法であると言えるでしょう。

 

2-3. 天候に左右されない安定した電源になる

再生可能エネルギーを利用した発電方法には、バイオマス発電の他にも太陽光発電や風力発電なども挙げられます。これらの発電方法は、環境に優しいとされる一方で、発電量が天候などの影響を大きく受けるため、安定した電源として使うことが難しいケースも少なくありません。

一方、バイオマス発電は、エネルギー源となるバイオマスを安定して確保できる体制が整いさえすれば、天候に影響を受けず発電量を自由に調整できるようになります。他の再生可能エネルギーによる発電方法と比べると、安定性のある電源として利用しやすいと言えるでしょう。

 

2-4. 長期的に見てコスト削減につながる

自治体の施設や企業の工場などで自家発電を行っている場合、バイオマス発電によって自家発電のエネルギーコストを削減できる可能性があります。また、生物由来の廃棄物が生じる施設の場合は、廃棄物処理に関するコストカットも実現できるでしょう。作り出した電力の余りを電力会社に買い取ってもらい、収入とすることも可能です。

ただし、バイオマス発電に関する設備の導入や運用にはコストもかかります。補助金制度や支援制度の利用も視野に入れながら、長期的な視点でコスト面の判断を行いましょう。

 

3. バイオマス発電のデメリット

バイオマス発電にはメリットもある一方、デメリットと言える部分があることにも注意が必要です。デメリットと言えるポイント・課題を考慮した上で、バイオマス発電の導入について検討を進めましょう。

 

3-1. 発電コストが高い

バイオマス発電のデメリットと言える点の1つとして、他の発電方法と比べて発電コストが高くなりやすい傾向があることが挙げられます。

生物資源は世界中の広範囲に分散しており、バイオマス発電を行う場所に集めるにはコストがかかります。また、木質系のバイオマスは燃焼の際のエネルギー効率を高めるために、乾燥させて水分量を減らす工程を経ることも少なくありません。運搬・保管しやすくするために、チップやペレットに加工する工程でも費用がかかる点に注意が必要です。

バイオマス発電はコストが増大しやすい傾向がある一方で、収集や運搬、管理にかかる燃料調達コストを減らす工夫を行っている企業も少なくありません。生物資源が豊富な地域や、木材産業・農業・食品加工業などと連携しやすい場所にバイオマス発電所を設けるなど、工夫次第でバイオマス発電のコストを削減できるでしょう。

 

3-2. 安定した資源の確保が現在は難しい

エネルギー源として使用する資源を安定的に確保することが現在は難しいことも、バイオマス発電のデメリットの1つと言えます。

日本では木質系廃棄物がよく使用されていますが、主な原料となる間伐材は、森林・林業基本計画によって発電に利用できる量が制限されています。現状は、PKSやパーム油といった、海外からの輸入燃料・輸入バイオマスに依存せざるを得ない状況であることを押さえておきましょう。

一方で、再生可能エネルギーへの注目の高まりを受け、近年では日本政府によって持続可能かつ安定的な資源確保に向けた取り組みが進められてきました。今後は、国内での安定供給・安定調達が実現する体制の整備や技術の開発も大切になるでしょう。

 

4. バイオマス発電の活用事例

バイオマス発電には課題もある一方でメリットも多く、現在では実用化されたバイオマス発電設備がさまざまな地域やシーンで活用されています。

たとえば、木材産業が盛んな大分県日田市では木質燃料を活用した「グリーン発電大分」が稼働中です。また、くずまき高原牧場には「畜ふんバイオマスシステム」、豊橋市の処理施設には下水汚泥を利用した「バイオマス利活用センター」があります。廃棄物を有効活用し、電気や熱エネルギーの提供を通して地域に貢献する施設の代表例と言えるでしょう。

出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電」

バイオマス発電は規模の大きい設備だけでなく、企業の工場や旅館、介護施設、自治体の施設などが導入できる規模の設備も少なくありません。発電装置として活用されているほか、蒸気ボイラーや温水ボイラー、温風機としてバイオマスボイラーを導入している事例も多く見られます。

現在では、メインのボイラーをバイオマスボイラーに切り替え、既存の化石燃料を使用するボイラーをバックアップとする企業も増えている状況です。

 

まとめ

バイオマス発電は、温室効果ガスの排出を実質的にゼロに抑えるカーボンニュートラルな特性を持ち、循環型社会の推進に貢献しています。さらに、天候に左右されず安定したエネルギー供給が可能な点は、太陽光・風力発電にはない利点です。一方で、発電コストに問題を抱えており、現在は海外からの輸入燃料・輸入バイオマスに頼っている部分がある点はデメリットです。

バイオマス発電は小規模な設備から導入でき、廃棄物があればエネルギーコストや廃棄物処理コストの削減につながります。長期的な燃料コスト、および廃棄物の削減を図るためにも、化石燃料を使用するボイラーを利用している方は、ぜひバイオマス発電導入をご検討ください。

関連記事