バイオマスボイラーとは、木くずや林地残材など、従来廃棄される資源を燃料として熱エネルギーを生成する熱源機器です。燃焼の際に二酸化炭素(CO2)が発生しますが、新たな樹木の成長による光合成で吸収されるため、環境にやさしい「カーボンニュートラル」を実現します。
当記事では、バイオマスボイラーの循環の仕組みやメリット、さらに導入事例について詳しく解説します。環境対策を考えている企業の担当者や、地域資源を有効活用したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
1.環境にやさしいバイオマスボイラーとは?
バイオマスボイラーとは、木くずや林地残材のような廃棄物を燃料として熱エネルギーを生成するための熱源機器です。
バイオマスボイラーは本来であれば廃棄される木材などを燃料としており、従来の化石燃料と比較するとCO2の排出量を大きく削減できます。日本は国土の森林率が約67%と非常に高いことから、木質バイオマス燃料を活用したバイオマスボイラーの導入により、地域でのエネルギー自己供給が可能です。
1-1.バイオマスエネルギーとは
バイオマスボイラーはバイオマスエネルギーを生成する熱源機器です。バイオマスボイラーを語る上で欠かせないバイオマスエネルギーとは、動植物由来の有機物を燃やして得られるエネルギーを指します。そもそもバイオマスとは、動植物に由来する有機物の中でも化学燃料を除いた有機性資源です。具体的には、薪や炭などが挙げられます。
バイオマスエネルギーはバイオマス資源を原料としたエネルギーであり、バイオマスの燃焼やガス化などを通して得られる熱を利用するのが特徴です。最終的には電力・ガスのほか、輸送用の燃料としても活用することが可能です。
バイオマスエネルギーは化石燃料に代わる新たなエネルギーであり、再生可能エネルギーの1つとしても注目されています。
1-2.バイオマスボイラーの仕組み
バイオマスボイラーは、燃料である樹木が光合成でCO2を吸収する性質により、熱源利用とのサイクルの中で循環の仕組みを生み出しています。
バイオマスボイラーの燃料となるのは木くずや廃材などの未利用資源です。燃焼の際はCO2が発生するものの、伐採後に更新された樹木の光合成によって再びCO2が吸収されます。その後は新たに伐採された樹木が再度バイオマスボイラーの熱源として活用されてCO2を排出し、更新された樹木によりCO2が吸収されるというサイクルを繰り返します。
バイオマスボイラーは、製材破砕チップや木ペレット、木チップ、建廃チップなどさまざまな資源を元にエネルギーを生み出します。下記では多様な燃料に対応できるバイオマスボイラーを紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
2.バイオマスボイラーとカーボンニュートラルの関係
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることです。温室効果ガスとはCO2やフロンガスなどを含む気体であり、地球温暖化の原因として問題視されています。また、カーボンニュートラルの「全体としてゼロにする」という言葉は、温室効果ガスの排出量から森林管理による吸収量と除去量を差し引いてゼロにすることを指します。
木質バイオマスボイラーは、カーボンニュートラルに貢献できるとして注目されているエネルギー生成方法の1つです。木質バイオマスを燃料としてボイラーで燃やすと、化石燃料を燃やした場合と同様にCO2が発生します。しかし、木質バイオマスは伐採後の森林が更新されて光合成を行えば新たにCO2を吸収するため、燃焼による排出量と相殺してプラスマイナスゼロと考えることが可能です。
つまり、木質バイオマスボイラーを導入すればエネルギー生成におけるCO2の排出量が実質ゼロとなり、カーボンニュートラルの実現に役立ちます。
3.バイオマスボイラーのメリット
木質バイオマスボイラーの活用には、環境問題対策をはじめとするさまざまなメリットがあります。バイオマスボイラーの導入を検討している方は、自社の課題とバイオマスボイラーの導入効果を確認しましょう。
ここでは、バイオマスボイラーのメリットについて詳しく解説します。
3-1.資源を有効活用できる
バイオマスボイラーの燃料は製造過程で生じた廃棄物が中心であるため、本来であれば廃棄される資源をリサイクル燃料として有効利用できます。
廃棄物を活用したリサイクル燃料は安価であるため、燃料の調達コスト削減につながります。また、環境負荷が少なく持続可能なエネルギー源である点もメリットの1つです。
木質バイオマスボイラーの燃料として使われている資源の例は、以下の通りです。
木質チップ | 木材加工時の端材を細かく砕いたもの |
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木質ペレット | 木材を粉砕・圧縮して成形したもの |
建築廃材 | 建設・解体現場で生じた廃材 |
3-2.CO2排出量を削減できる
バイオマスボイラーで使用する木質バイオマスはカーボンニュートラルであるため、化石燃料を使用する場合と比較するとCO2排出量を大幅に削減できるのが特徴です。
例として、これまで灯油ボイラーを活用していた施設での木質バイオマスボイラー設備導入を想定します。木質バイオマスボイラーはカーボンニュートラルを実現でき、導入後のCO2の排出量は実質ゼロとなります。
熱需要が高い時間帯に既存の灯油ボイラーをバックアップ用として稼働させたとしても、CO2の排出量はバックアップ分のみに抑えることが可能です。
3-3.燃料コストを削減できる
木質燃料の価格は安定しているため、従来のエネルギー源と比較すると燃料コストを削減できます。木質バイオマスボイラーの代表的な燃料である木質チップは、熱量あたりの価格が灯油の約3割と非常に安価です。導入時にかかる初期コストを考慮しても、毎年のランニングコストが減少するため、数年間で初期コスト分を回収できるでしょう。
温水プール・温浴施設などの熱利用施設では、木質バイオマスボイラーの導入により燃料費を大幅に削減できる可能性が高いでしょう。
3-4.地域活性化につながる
木質バイオマスボイラーによって森林資源を有効活用できれば、地域活性化にも貢献できます。日本は森林大国であり、森林資源は毎年増加しています。木質バイオマスのエネルギー利用を積極的に推進することは、地域の雇用確保や経済成長にもつながるでしょう。
また、木質バイオマスボイラーで使用されるのは地産地消のエネルギー資源であるため、持続可能な地域づくりという側面からも注目を集めています。
4.バイオマスボイラー導入でCO2排出量を削減した事例
バイオマスボイラーは国内で導入が進んでおり、自治体や施設においてCO2排出量を削減した事例が数多く報告されています。バイオマスボイラーの導入を検討する際は、実際にバイオマスボイラーによりCO2削減に成功した施設の事例をチェックしましょう。
ここでは、バイオマスボイラー導入の成功事例について詳しく解説します。
4-1.長崎県雲仙市の事例
長崎県雲仙市では、ゼロカーボンシティを目指して市の環境センターにバイオマスボイラーを導入しました。雲仙市の環境センターでは、し尿や汚水を発酵・乾燥させて肥料を作っています。バイオマスボイラーの導入により、これまで燃料として利用していた重油が木質チップへと変わりました。
チップには地元の森林組合から出ている廃材を使っており、燃焼による熱を利用して肥料を発酵させています。雲仙市の環境センターでは木質バイオマスボイラーの導入により、年間のCO2排出削減量が約289トンとなる見込みです。
4-2.株式会社イクロスの事例
株式会社イクロスでは、金沢工業大学白山麓キャンパスに小型バイオマスボイラー「CHP Bailer e7」を導入しました。金沢工業大学でスタートしたバイオマスボイラーの実証実験では、地元産木材チップをボイラーの燃料とし、発生する熱と電力の有効活用を目指しています。「CHP Bailer e7」を導入した実証実験は、NHKやテレビ金沢など多くのメディアで紹介され、注目を集めました。
イクロスのバイオマスボイラー「CHP Bailer e7」は、木チップや竹チップ、廃プラスチック、建築廃材など多様な燃料に対応しており、環境負荷を低減しつつ高効率なエネルギー供給が可能です。
実証実験では、CO2排出量を削減しながら持続可能なエネルギー供給を実現するだけでなく、地元の森林資源を活用することで里山再生にも貢献しています。
株式会社イクロスでは、これまで工場内施設や温浴施設、民宿や旅館、介護施設などさまざまな施設でバイオマスボイラーの導入を手掛けてきました。バイオマスボイラーを導入してCO2排出量を削減したい方や、燃料費のコストを削減したい方は、ぜひ下記のリンクを参考にしてください。
まとめ
バイオマスボイラーとは、廃材や木くずなどのバイオマス燃料を活用して熱エネルギーを生成する熱源機器です。バイオマスボイラーは、燃料として利用する木質バイオマスが持つカーボンニュートラル特性によって、CO2排出量を実質ゼロに抑えることができます。
また、廃棄物の有効活用による資源循環の促進や、燃料コストの削減、地域活性化といった多くのメリットもあります。持続可能な社会の実現が求められる現代において、環境負荷の軽減に取り組むことは重要です。バイオマスボイラーを導入し、地球にやさしいエネルギー利用を推進しましょう。