木質バイオマス燃料とは、木材から得られる再生可能なエネルギー資源であり、化石燃料に代わる環境にやさしい選択肢として注目されています。薪やペレット、チップなどさまざまな形態があり、それぞれの用途や特徴に応じた活用が可能です。
当記事では、木質バイオマス燃料の種類や特徴、品質管理のポイント、具体的な活用方法について詳しく紹介します。木質バイオマスに関心のある方や、持続可能なエネルギー資源を探している方にとって、有益な情報が詰まった内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 木質バイオマスとは?
バイオマスとは生物資源(bio)の量(mass)を表す言葉であり、再生可能な生物由来の有機性資源の中で化石資源を除いたものを指します。バイオマス資源の種類は多岐にわたり、さまざまな区分に分けられます。
木質バイオマスとは、バイオマスの中でも木材からなる有機性資源です。具体的には、木の枝や葉などの林地残材、製材工場で発生する樹皮・のこ屑、街路樹の剪定枝などが挙げられます。
木質バイオマス資源はそれぞれで特性・状態が異なるため、種類ごとの特徴に合った方法で活用することが重要です。
1-1. 木質バイオマスの形態
木質バイオマス燃料は、森林から直接得られる燃料と、木材加工で発生する端材や産業廃棄物を原料とする燃料の大きく2つに分けられます。同一の燃料であっても形状や水分量などの個体差が大きく、品質にばらつきがあるのが特徴です。
また、木質バイオマスは多様なエネルギー転換が可能であることから、化石燃料の代替資源として注目されています。具体的なエネルギー転換方法は以下の通りです。
直接燃焼 |
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熱化学的変換 |
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生物化学的変換 |
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木質バイオマス燃料は直接燃料・熱化学的変換・生物化学的変換を経て熱利用や電力利用されるほか、輸送用燃料としても消費されます。
2. 木質バイオマス燃料の品質規格では水分管理が重要
木質バイオマス燃料に使われる木材は、水分含有量を考慮することが重要です。燃料材に含まれる水分量は発熱性・着火性・燃料性に関わるため、水分量に関する品質規格基準が細かく定められています。
木質バイオマス燃料は、水分量が少ない木材ほど燃料品質が高いと判断されるのが特徴です。具体的な理由は、以下の通りです。
- 熱量がアップするため
含水率が高い木質を燃焼させると、水分の蒸発にエネルギーが使われることから有効な熱量が減少します。対して、含水率が低いと得られる熱量が増え、熱効率アップにつながります。 - 乾燥コストを削減できるため
木質の乾燥には相応のエネルギーが必要です。乾燥コストのカットには自然乾燥の採用や乾燥方法の見直しはもちろん、そもそも水分含有量が少ない木質を選ぶことも1つの方法です。 - 環境保護に貢献できるため
含水率が高い木質は不完全燃焼を引き起こしやすく、有害物質を放出する危険性があります。水分量を適切に管理すれば、燃焼時の環境負荷を低減することが可能です。
3. 木質バイオマスの燃料
木質バイオマス燃料は環境にやさしいエネルギー源として注目を集めています。燃料にはさまざまな種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なるのが特徴です。
ここでは、木質バイオマスの燃料の種類や特徴について詳しく解説します。
3-1. 薪
薪はもっとも古くから利用されている木質バイオマスです。大割・小割・丸薪などの種類があります。
近年では震災によるインフラ整備をきっかけとして、電気・ガスが不要な薪ストーブやボイラーの活用が注目されています。薪は加工コストが低く、水分含有量が25%以下であれば最新型の薪ストーブやボイラーでスムーズに使用することが可能です。
ただし、燃料投入の自動化・細かな温度調整が難しい点や、かさ張りやすく流通には向かない点がデメリットとして挙げられます。
3-2. ペレット
ペレットは直径6~8mm、長さ5~40mmの円筒型の木質燃料であり、日本語では固形粒状燃料と呼ばれます。
木質ペレットは木材を破砕して成形するという性質上、そもそも水分量が少ない木材でなければ成形できないことから、薪などと比較すると水分量が低いのが特徴です。また、小型ボイラーやストーブにも自動供給できる上、細かな温度調整も可能です。
デメリットには、薪などと比較すると生産コストが高くなること・燃焼後に灰分(燃焼せずに残る不純物)が燃えかすとして残ってしまうことが挙げられます。
3-3. チップ
チップは木材を細かく切削した燃料であり、1次加工の形態としてはもっとも広く用いられているのが特徴です。
木質チップは細断する機械によって切削チップ・スクリュー切削チップ・破砕チップの大きく3種類に分けられます。ペレットと比較すると生産コストが低いことから安価で調達しやすく、主に業務用のボイラーで使用されています。
チップのデメリットとして挙げられるのは、サイズ・水分量に個体差があり発熱量が低いため、家庭用の小型燃焼機器には適さない点です。
3-4. おが粉
おが粉は製材を加工する過程で生じる副産物・残余物であり、バイオマス燃料以外にも畜産敷料やきのこ栽培などに使用されています。
おが粉は木の幹から出る残余物であるため、土砂などの混入が少ないのが特徴です。また、そのままの細かい状態で燃料に使用されるほか、ペレットなどの成形燃料の原料としても役立っています。
おが粉は流下してしまうことから燃焼が不安定になりやすく、固定床式ガス化炉への適用は難しいのがデメリットです。
3-5. 樹皮
樹皮は製材所での加工プロセスによって発生する副産物・残余物であり、樹木の表皮部分です。
樹皮は水分含有量が55~60%と非常に高く、混焼燃料として火力発電などに使用されています。また、スギの樹皮はバイオマス燃料によるエタノール製造にも活用することが可能です。
ただし、樹皮は水分量が多いためガス化炉適用が難しいのが難点です。また、灰分が多いことから燃焼時に灰が溶けて固まった「クリンカ」が発生し、焼却炉の安定した運転を妨げる点もデメリットとなります。
3-6. 廃材
廃材は製材や土木・建設などの現場で発生する端材です。そのまま燃料として使用されることもあれば、ペレットやチップの原料となる場合もあります。
廃材は水分含有量が10~15%と低く、主に熱供給や発電ボイラーの燃料に活用されています。また、特に建築廃材は原料価格が安定していることから、常に低コストで調達できるのが魅力です。
ただし、ペンキや接着剤、プラスチックなどの残余物が付着している廃材は、炉に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、大量の薬剤処理が行われている木材は燃料として使用できません。
4. 木質バイオマス燃料を活用するメリット
木質バイオマス燃料を活用することにはさまざまなメリットがあります。具体的なメリットは以下の通りです。
- エネルギー資源として有効活用できる
- 環境にやさしい
- 液体燃料として活用できる
木質バイオマスの利用木材は工場や解体現場の廃材・残材などが多く、本来であれば廃棄される資源を有効活用できます。木質バイオマス事業が広がれば、循環型社会の実現にも貢献できるでしょう。
また、木質バイオマス原料である樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収していることから、燃焼するとその分二酸化炭素を排出します。しかし、伐採した森林が更新されると光合成により再び二酸化炭素を吸収するため、結果として大気中の二酸化炭素量に影響を与えません。木質バイオマス利用は、地球温暖化対策に大きく貢献していると言えるでしょう。
さらに、木質バイオマスは発酵させることによってバイオエタノールを抽出できる点もメリットの1つであり、有害物質を排出せずに得られる液体燃料として注目されています。
木質バイオマスは木質チップやペレットなどに加工され、ボイラーで燃やすことでさまざまな施設でエネルギーとして活用されています。多様な燃料に対応できるバイオマスボイラーやバイオマス温風機などもあるため、設備の種類が気になる場合はぜひ下記の製品例も合わせてご覧ください。
まとめ
木質バイオマスとは、森林や製材加工の副産物を活用した再生可能エネルギーです。薪やペレット、チップなど多様な形態を持ち、それぞれの用途に応じて利用することで、化石燃料の削減や二酸化炭素排出量の抑制につながります。
また、木質バイオマス燃料は、廃材や林地残材を有効活用することで資源の循環を促進し、持続可能な社会の実現に貢献しています。再生可能エネルギーの選択肢として木質バイオマス燃料を取り入れ、環境に配慮した暮らしを実現しましょう。