環境問題や資源の枯渇が深刻化する中、廃棄物を活用した新たなエネルギー源への関心が高まっています。中でも、古紙や廃プラスチックを原料とする固形燃料「RPF」は、廃棄物の有効活用とエネルギー供給の両立を目指す取り組みとして注目されています。プラスチックによる環境汚染が注目される中で、RPFの活用は企業がSDGsを達成するための施策になるでしょう。
この記事では、RPFの基礎知識や、RPFに類似の「RDF」との違い、原料として利用できる素材やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
1.RPFとは
RPFとは、古紙とプラスチックを中心とした廃棄物を混ぜ、小さく成形して作られた固形燃料のことです。自然の中で分解できないプラスチックやラミネート加工された紙類も、RPFに加工すると化石燃料の代替品として活用できます。
以下では、RPFについての基礎知識を紹介するため、RPFへの理解を深める参考にしてください。
1-1.RPFとRDFの違い
RPFと類似した燃料がRDFです。両者とも、廃棄物固形燃料という点では共通しているものの、いくつか違いもあります。
RPFは主に古紙と廃プラスチックを原料とする一方、RDFは家庭や事業所から排出される一般的な廃棄物を原料としています。発熱量も、RPFが1kgあたり20,000~40,000kJ、RDFが1kgあたり12,000~20,000kJとRPFのほうが高く、燃料としての性能は優秀です。また、RPFのほうがダイオキシンの発生率が低く、環境への悪影響を抑えやすいという違いもあります。
1-2.RPFが注目される背景
近年、RPFが注目されるようになった背景としては、大きく分けて2つの理由が挙げられます。
1つ目の理由は、石油・石炭のような化石燃料に代わる燃料の必要性が高まったためです。石炭に劣らない熱量を有した燃料であるRPFは、脱化石燃料や脱炭素といった、SDGsを実現できる可能性を秘めた代替燃料として期待されるようになりました。
2つ目の理由は、RPFは国内における廃プラスチックの処理方法となるためです。2017年から、中国を皮切りに、東南アジア各国などで廃プラスチック輸入が制限・禁止されはじめました。日本の廃プラスチックの輸出量は世界でトップクラスを誇り、他国の輸入制限により、国内で大量の廃プラスチックを処分する必要が生じました。
RPFを生産することで、大量のプラスチックが排出されても、他国に頼ったり廃棄したりせずに有効活用でき、新しいプラスチックリサイクルの手法として期待されています。
2.RPFにできる素材・できない素材
一見RPFにできそうな素材なプラ・紙廃棄物であっても、すべてがRPFにはできるわけではありません。RPFに適している素材と適していない素材について、以下でそれぞれ解説します。
2-1.RPFの原料になる素材
RPFの原料にできる素材は、主に古紙と廃プラスチックの2種類です。RPFの原料にできる素材のうち、古紙には次のような素材があります。
- 普通紙
- アルミ蒸着紙
- 捺染紙
- 紙製容器(紙コップ・紙皿など)
- ラミネート加工紙
- 粘着テープ(ラベル・ステッカー・ガムテープなど)
- フィルム類 など
RPFの原料にできるプラスチック類は、次の通りです。
- ポリプロピレン(ポリ袋・PPバンドなど)
- ポリエチレン
- ポリスチレン(食品トレー・発泡スチロールなど)
- ポリウレタン(スポンジ・靴底など)
- 硬質プラスチック
- 上記プラスチックの複合品
古紙・プラスチックのほかにも、衣類や畳、布団、木くずなどの可燃廃棄物もRPFの原料として利用されます。
2-2.RPFの原料にならない素材
古紙や廃プラスチックの中でも、RPFの原料に向かない素材もあります。紙類でRPFの原料にならないのは、次のような素材です。
- 大量の水分や薬品を含んだ紙
- 感染性物質
- 未乾燥の揮発性インクが付着した紙
古紙は、基本的に過度に汚れているとRPFの原料にはならないと考えてよいでしょう。
プラスチック類にも、RPFの材料に向かない素材が多くあります。次のようなプラスチック類は、RPFの原料にはなりません。
- 農業用ビニール
- 電線被膜
- 水道管
- 合成皮革
- ゴム手袋
- 熱硬化性樹脂(フェノール樹脂・FRPなど)
基本的に、塩素濃度が高いプラスチックはRPFには使えません。上記のプラスチック類は、ポリ塩化ビニールなどの塩素濃度が高い素材でできています。
ほかには、油のついたウェスのように汚れたアイテムや、金属・陶器といった不燃物もRPFの原料にはできません。
3.RPFのメリット
RPFには以下のようなメリットもあるため、化石燃料の代替として注目されています。
・品質が安定している
RPFの原料は、廃棄物の中でも発生元が明らかな特定の素材に限られており、何が含まれているか分かりやすく、品質が安定しています。特にJIS規格品であれば高カロリーで、燃料としての性能が高くなる傾向があります。
固形で容積が小さいことから、貯蔵しやすく、輸送効率にも優れている点も品質の高さにつながるメリットです。また、RPFは複数の原料を配合して作られており、配合を変えれば熱量をコントロールしやすい点もRPFの品質を支えています。
・経済性がある
RPFは、価格が石炭の4分の1から3分の1程度と低価格で経済的です。灰化率も石炭の3分の1以下で、燃焼後の灰の発生量も少なく、灰処理費用も抑えられます。
・排ガス対策が容易で環境にも優しい
RPFは不純物の混入率が低く、塩素濃度の高いプラスチックを使わないため、ダイオキシンなどの有害なガスの発生を抑えられます。ボイラーの腐食が起きにくい上に硫黄ガスも発生しにくく、ボイラーや焼却炉の排ガス処理も比較的容易です。原料が廃プラや古紙であり、プラスチックによる環境汚染問題など注目度の大きな課題に対して、ESGの点からもアピールできます。
また、公害の発生も抑えられることから、工場内だけでなく周囲の環境にも優しく、SDGsの達成に役立つことも期待できます。
RPFは、全体的に燃料としての性能が石炭より高く、扱いやすい燃料です。化石燃料の代替として有力な選択肢と考えられるでしょう。
4.RPFのデメリット・課題
RPFには多くのメリットがある一方で、デメリットや課題と言える点もいくつかあります。RPFの代表的なデメリット・課題は以下の通りです。
・廃棄物の量に生産量が左右される
RPFは、供給量が不安定な廃棄物を原料としており、安定した生産量を担保するのが難しい点が課題です。廃棄物が減ると、RPFの生産量も落ちます。原料の廃棄物は積極的に産出・生産できず、RPFの供給量を意図的には増やせません。RPFを普及させるには、どのようにRPF製造の安定化を図るかがキーポイントとなるでしょう。
・低品質の廃棄物はRPFに向かない
高品質なRPFを製造するには、廃棄物を分別し、原料に向かない素材を排除することが大切です。原料の分別工程が不十分な場合、原料に多くの不純物が混じってRPFの質が低下するだけでなく、ダイオキシンが発生するリスクが高まります。
また、RPFは古紙とプラスチックを混ぜて固めたものであり、RPFを燃焼させたときのCO2の発生を完全に抑えられません。CO2の排出削減には寄与しづらいと言え、カーボンニュートラルを目指している場合はそぐわない可能性があります。
RPFは、廃棄物を分別して原料に含まれる素材を限定することで品質を担保する一方、安定した供給や品質の維持に課題を抱えています。廃棄物の資源化技術の開発などによって課題の解決方法を探り、デメリットが小さくなれば、将来的には化石燃料の代替としてより広く使われる可能性が高いでしょう。
まとめ
RPFは、高い燃料性能や経済性、排ガス対策の容易さといったメリットがあるため、化石燃料の代替として注目されています。ただし、原料となる廃棄物の供給が不安定であることや、品質管理の難しさなどの課題があるため、現状は発展途上の技術と言えます。
ESG経営が重視される現在、クリーンエネルギーとしてのRPFの活用は自社のSDGsへの取り組みとしてPRできる施策です。今後、技術開発や法整備により、原料の安定供給や品質管理の課題が解決されれば、RPFの活用範囲はさらに広がるでしょう。