木質バイオマスは、森林資源や製材工場からの残材、建設発生木材などを有効活用する再生可能エネルギー資源です。化石燃料と異なり、燃焼時の二酸化炭素排出量は樹木の成長過程で吸収された量と釣り合うため、カーボンニュートラルであるという特徴を持ちます。一方で、発電効率の低さや調達コストの高さ、輸入燃料依存などの課題も存在します。
当記事では、木質バイオマスの定義や種類、活用のメリットとデメリット、さらに主な用途について詳しく解説します。
1.木質バイオマスとは
木質バイオマスとは、再生可能な生物由来資源の一種で、木材を起源とする資源を指します。バイオマスは本来「生物資源(bio)」と「量(mass)」を意味し、生物から得られる有機性資源を包括します。ただし、石油や石炭のような化石燃料は生成に長い年月を要するため、再生可能な資源には含まれません。
木質バイオマスは、発生場所や状態によって性質が異なります。発生場所が森林か市街地か、状態として含水率や異物の有無がどのようになっているかによって、適切な利用方法を検討することが大切です。
木質バイオマスは近年、持続可能なエネルギー資源として注目を集めています。
1-1.木質バイオマスの種類
木質バイオマスは、発生源や利用状況に応じていくつかの種類に分けられます。
・未利用間伐材
森林の間伐や主伐によって伐採された木材のうち、林地に残置された枝葉や細い幹などを指します。年間約2,000万立方メートルが発生していますが、多くは利用されず放置されています。今後の安定的な利用には、森林施業の集約化や林道整備による輸送コストの削減、新たな需要開拓といった課題への対応が必要です。
・製材工場等残材
製材過程で発生する樹皮、背板、のこ屑などの副産物です。年間約850万立方メートルが発生し、約95%は製紙原料や燃料、家畜敷料として既に有効活用されています。循環利用が進んでいる代表的な資源です。
・建設発生木材
住宅の解体や土木工事などで排出される木材を指します。年間約1,000万立方メートルが発生し、約90%が燃料や製紙原料、木質ボード原料などに再利用されています。廃棄物処理と資源活用を兼ね備えた重要な資源です。
木質バイオマスは発生源によって性質や利用状況が異なります。特に未利用間伐材の活用が、今後の利用拡大における重要な課題です。
2.木質バイオマスを活用するメリット
木質バイオマスは、再生可能エネルギーの中でも環境負荷の低減や資源の循環利用につながります。ここでは、木質バイオマスの具体的なメリットを解説します。
2-1.二酸化炭素の排出を抑制する
木質バイオマスの最大の特徴は、カーボンニュートラルな資源である点です。樹木は成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収しており、燃焼時に排出される二酸化炭素は吸収量とおおむね釣り合います。そのため、大気中の二酸化炭素濃度を増加させません。
化石燃料のように新たな二酸化炭素を追加的に排出しないため、木質バイオマスは温室効果ガス削減につながります。森林の更新と適切な管理を組み合わせれば、地球温暖化対策の有効な手段となるでしょう。
2-2.廃棄物を有効活用できる
木質バイオマスは、従来であれば廃棄物として処理されていた木材を有効活用できる点がメリットです。製材工場で発生する樹皮やのこ屑、住宅解体で出る木材などは、そのままでは処分費用や環境負荷を伴いますが、燃料や原料として利用することで資源循環に役立ちます。
限りある資源を効率的に使うという観点からも、廃棄物の活用は持続可能な社会を目指す上で大切な取り組みです。
2-3.化石燃料の消費量を減らせる
日本はエネルギー資源の多くを海外からの輸入に依存しており、供給リスクや価格変動が課題となっています。木質バイオマスを活用することで、化石燃料の使用量を削減し、国産の再生可能エネルギー比率を高められます。
特に地域で調達できる木材を燃料として利用すれば、輸送に伴う二酸化炭素排出も抑えられるため、環境負荷低減とエネルギー安全保障の両面で効果があります。エネルギー需要のすべてを賄うことは難しいものの、化石燃料への依存度を少しでも下げることは、持続可能なエネルギー供給体制の構築につながります。
2-4.燃料をストックしやすい
木質バイオマスのメリットは、燃料を長期間安定して保管できる点です。太陽光や風力といった自然条件に左右されるエネルギーと異なり、木材は倉庫などで備蓄が可能であり、気候変動や一時的な需要変動の影響を受けにくい特性を持っています。乾燥や加工の状態を適切に管理すれば品質を保ったまま利用できるため、安定的な供給に寄与します。
木質バイオマスの貯蔵性の高さは、災害時や緊急時におけるエネルギー確保にも有効であり、他の再生可能エネルギーにはない大きな強みです。
3.木質バイオマスを活用するデメリット
木質バイオマスは再生可能エネルギーとして注目される一方で、課題も抱えています。持続的な活用を進めるためには、さまざまな課題を理解した上で適切な対策を講じることが求められています。ここでは、木質バイオマスに関する課題について解説します。
3-1.発電効率が低い
木質バイオマス発電の大きな課題は、発電効率の低さです。蒸気タービンを利用した場合、効率は20~30%程度とされ、石炭火力発電と比べると見劣りします。
ただし、電気と熱を同時に利用する「熱電併給」を導入すれば、総合的なエネルギー利用効率を高めることが可能です。地域熱供給や工場の熱需要と組み合わせることで、欠点を補えると考えられています。
3-2.調達コストが高い
木質バイオマスを燃料として利用するには、収集や運搬、加工にかかるコストが大きな課題です。森林内に残された間伐材や枝葉は道路整備が不十分な地域も多く、運搬に時間と費用がかかります。また、燃料の品質は水分量や形状によってばらつきがあり、安定供給の難しさがコスト上昇につながります。
これらの理由から、木質バイオマスの発電コストは化石燃料と比べて割高になる傾向があります。コスト低減のためには、効率的な収集体制の構築や、地域単位での安定供給ネットワークの整備が不可欠です。
3-3.海外からの輸入依存が起きている
日本における木質バイオマス発電の燃料は、近年輸入材への依存が高まっています。特に木質ペレットやPKS(パーム椰子殻)は東南アジアなどから多く輸入されており、国内資源だけでは需要を賄えていないのが現状です。
しかし輸入燃料は、為替変動や国際情勢の影響を受けやすく、供給不安や価格高騰のリスクを抱えています。また、輸送に伴う二酸化炭素排出が増えるため、本来の環境負荷低減効果を損なう懸念も指摘されています。
木質バイオマスの活用では、国内資源の活用拡大と地域ごとの燃料自給体制の構築が課題と言えるでしょう。
4.木質バイオマスの主な用途
木質バイオマスは、燃料用途を中心に幅広い分野で活用されています。
木材産業では、工場内で発生する端材や樹皮を燃やし、木材乾燥や暖房に利用しており、一部では発電も行われています。公共施設でも温泉や温水プール、役場庁舎などで木質バイオマスボイラーが導入され、学校や家庭では木質ペレットストーブの普及が進んでいます。
大規模な取り組みとしては、電力事業者や製紙工場、製鉄所などが石炭火力発電所において木質バイオマスを石炭と混焼し、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。
木質バイオマスは、地域利用から産業利用まで多面的に活用されており、環境負荷の低減と資源循環の両立を実現する有効なエネルギー源です。
まとめ
木質バイオマスは、森林や製材工場、建設現場から生じる木材を活用する再生可能エネルギー資源です。カーボンニュートラルで二酸化炭素排出の抑制に寄与し、廃棄物を資源として循環利用できる点は大きな強みです。しかし、発電効率や調達コストの課題、輸入依存によるリスクが残されており、今後は国内資源の活用拡大や効率的な収集体制の整備が求められています。
木質バイオマスは持続可能な社会において重要な役割を担うエネルギー源です。環境負荷の低減と資源循環を実現する手段の1つとして、地域や産業でのさらなる活用が期待されます。


