小規模木質バイオマス発電とは?わかりやすく概要・種類について解説

近年、再生可能エネルギーの活用が注目される中で、木質バイオマス発電は持続可能なエネルギー供給手段として期待されています。特に、小規模木質バイオマス発電は地域資源の有効活用やエネルギーの地産地消を可能にするため、環境負荷の低減にも貢献します。しかし、発電システムにはさまざまな種類があり、それぞれの仕組みや特徴を理解することが重要です。

この記事では、小規模木質バイオマス発電の基本的な仕組みや種類について詳しく解説します。さらに、導入するメリットやデメリットについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

1. 小規模木質バイオマス発電とは?

小規模木質バイオマス発電とは、木材を燃料として発電する木質バイオマス発電のうち、一般的に出力規模が2,000kW以下のものを指します。間伐材や未利用材などを活用することで、地域の森林資源を有効活用でき、環境負荷の低減にもつながる発電方式です。

また、地域の森林管理や未利用材の活用を促進するため、地域企業の雇用創出や地元経済の活性化、環境保護にも貢献します。発電時に発生する熱を周辺施設へ供給すれば、エネルギーの有効利用も可能です。

また、FIT(固定価格買取制度)の対象となっており、事業として成立しやすい点も特徴です。近年では、脱炭素や再生可能エネルギー推進の流れを受け、持続可能な地域エネルギーの1つとして期待が高まっています。

 

2. 小規模木質バイオマス発電の種類

小規模木質バイオマス発電には、複数の発電方式が存在します。主に「蒸気タービンシステム」「ORCシステム」「ガス化システム」の3つが代表的です。それぞれの方式には、発電効率や適用規模、導入のしやすさなどに違いがあり、目的や条件に応じて選択しなければ期待する効果は得られません。以下では、それぞれの特徴を解説します。

 

2-1. 蒸気タービンシステム

蒸気タービンシステムとは、高温高圧の水蒸気でタービンを回して発電する方式です。火力発電所などで用いられていることから技術的な信頼性が高く、大規模なバイオマス発電にも適用されている発電方法です。

この発電システムは、ボイラーで発生させた蒸気をタービンに送り、回転運動によってバイオマス発電機を駆動させます。発電規模が大きくなるほど効率が向上するため、大規模施設向けに適しているものの、小規模発電では発電効率がやや低くなるという課題があります。

ただし、発電時に発生する熱を地域の産業施設や暖房設備に活用する「コージェネレーション(熱電併給)」を導入すれば、エネルギーの総合効率を高めることが可能です。国内でも、製材工場や製紙工場をはじめ多くの産業で導入が進んでいます。

熱の有効利用を前提とした計画が求められるものの、技術の成熟度が高く運用実績も豊富なため、長期的な安定運用が可能です。FIT(固定価格買取制度)の適用対象でもあり、燃料供給の確保と熱利用の計画が適切に整えば、採算性の確保が期待できます。

 

2-2. ORCシステム

ORC(有機ランキンサイクル)システムとは、水蒸気の代わりに有機媒体を使用してタービンを回し発電する方式です。低温でも蒸発しやすい特性を持つシリコンオイルなどの有機媒体を利用するため、小規模な発電でも比較的高い効率を維持できます。

ORCは、バイオマスボイラーで加熱したサーマルオイルを使い、ORCユニット内で有機媒体と熱交換するシステムです。有機媒体の蒸気でタービンを回転させて発電し、その後、冷却された蒸気を再び液化して循環させます。

ORCシステムの特徴は、安定した発電効率と安全性の高さです。メンテナンスの負担が少なく、欧州では無人運転が行われているところもあります。また、タービン冷却時に発生する80~90℃の温水を暖房や給湯、産業用途に活用できるため、熱利用を組み合わせれば発電事業の採算性を向上させられるでしょう。

日本国内での導入件数はまだ少ないものの、欧州では200基以上の導入実績があり、信頼性のある技術として認識されています。今後、FIT制度の活用とともに国内でも導入が進むと期待されています。

 

2-3. ガス化システム

ガス化システムとは、木質バイオマスを熱分解し、生成したガスを燃料としてエンジンで発電する方式です。小規模でも発電効率が比較的高く、総合エネルギー効率も優れている点が特徴です。

この方式では、木質バイオマスを木質チップもしくは木質ペレットに加工し、熱分解と還元反応によって可燃性ガスを生成します。このガスを燃焼させ、エンジンを回転させて発電します。発電効率は20~30%と高めです。さらに発電時に発生する熱を温水として回収し、地域の温浴施設や農業用ハウス、食品加工工場などで活用すれば、総合エネルギー効率は跳ね上がります。

ガス化システムは、発電規模が比較的小さいため、地産地消型のエネルギー供給に適した発電方式です。欧州では1,000基以上の導入実績があり、東南アジアでも開発が進んでいます。国内でも、温浴施設や宿泊施設などでの熱利用を目的とした導入が進められています。

発電設備がコンパクトで設置面積が少なく、オペレーターを常駐させる必要がないため、小規模事業者でも導入しやすいのがメリットです。また、標準型設備を複数台並べることで、発電量を柔軟に増やせる点も特徴です。ただし、ガス化技術にはばらつきがあり、信頼性の低い製品も存在するため、導入時にはメーカーや関係事業者の選定が重要となります。

 

3. 小規模木質バイオマス発電のメリット・デメリット

小規模木質バイオマス発電には、さまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。導入を検討する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、目的や条件に適した活用方法を検討することが重要です。

 

3-1. メリット

小規模木質バイオマス発電の最大のメリットは、地産地消のエネルギー供給が可能であり、地域経済の活性化にもつながる点です。さらに、FIT(固定価格買取制度)の対象となることで、事業化による採算性も確保しやすくなっています。

まず、発電時に発生する熱を有効活用できる「コージェネレーション(熱電併給)」が可能です。これにより、発電効率が低くても総合エネルギー効率を70~80%まで向上させられます。温水として供給すれば、農業用ハウスの暖房や食品加工など、地域の産業と連携しやすいのも特徴です。

また、FIT制度により、発電出力2,000kW未満の設備では1kWhあたり40円(税別)という高い買取価格が設定されており、一定の収益性を確保できます。未利用材や間伐材の活用により、森林管理の促進や雇用創出にも寄与するなど、地域経済の安定化も期待できるでしょう。

 

3-2. デメリット

小規模木質バイオマス発電のデメリットは、発電効率が低く、バイオマス燃料材の安定供給が必要である点です。特に、発電効率の面では大規模な発電所に比べ、エネルギー変換効率が低くなる傾向にあります。

燃焼温度が低い木質バイオマス発電は、発電効率も20~30%程度です。そのため、発電のみを目的とすると採算性は悪くなるでしょう。ただし、熱供給システムの整備によってエネルギー利用効率を向上させ、経済性を補うことは可能です。

さらに、木質燃料の調達コストも無視できません。未利用材を活用するとはいえ、収集や運搬にはコストがかかるため、安定して木質バイオマス発電所に供給するルートの確保が課題となります。また、木材の需要が増えつづければ、他産業とのバイオマス資源競争が起こりかねません。こうした点を踏まえ、燃料調達や熱利用の計画をしっかり立てる必要があります。

 

まとめ

小規模木質バイオマス発電は、再生可能エネルギー技術の1つとして注目されており、地域資源を活用しながら持続可能な発電を行える点が特徴です。主な発電システムとして、蒸気タービンシステム、ORCシステム、ガス化システムがあり、それぞれ異なる特徴や利点を持っています。

また、環境負荷の低減やエネルギーの地産地消といったメリットがある一方で、設備コストや燃料の安定供給などの課題も存在します。これらの特徴を踏まえ、導入の検討を進めることが重要です。

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