企業の環境経営を進める上で欠かせないのが、温室効果ガス(GHG)の排出量を正しく把握することです。その指標として用いられるのが「Scope1」「Scope2」「Scope3」という3つの区分です。Scope1は自社の直接排出、Scope2は購入した電気などによる間接排出、Scope3は企業活動に関連するその他の間接排出(出張、通勤、投資なども含む)を示します。
当記事では、この3つのスコープの概要と算定方法を解説し、サプライチェーン全体で排出量を管理するメリットについて紹介します。環境対策やCSR、コスト削減を考える企業担当者に役立つ内容です。
1. Scope(スコープ)1・2・3とは
モノがつくられ、運ばれ、使われ、最後に廃棄されるまでの流れを「サプライチェーン」と呼びます。この一連の流れの中で排出される温室効果ガス(GHG)を整理するために、「Scope1」「Scope2」「Scope3」という3つの区分があります。これは国際的な基準である「GHGプロトコル」で定められたもので、企業が排出量を計算・報告する際の共通ルールになっています。
GHGプロトコルとは、世界環境経済人協議会(WBCSD)と世界資源研究所(WRI)が1998年に共同で策定を開始した国際的な基準です。複数のステークホルダーの協力により開発され、GHG排出量の算定・報告の世界共通ルールとして利用されています。
Scope1は自社の直接排出、Scope2は購入した電気・熱などのエネルギー使用に伴う間接排出、Scope3は原材料調達から製品廃棄までのサプライチェーン全体に加え、出張や通勤などを含むその他の間接排出を指します。この3つを合計したものが「サプライチェーン全体の排出量」となり、環境経営を進める上での土台になります。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
1-1. Scope1とは
Scope1とは、企業や組織が事業活動の中で直接排出する温室効果ガス(GHG)のことを指します。工場で燃料を燃やして出るCO2や、セメント製造の際に発生するガス、冷媒として使われるフロンガスの漏えいなどが代表例です。
たとえば、自社のボイラーで石炭やガスを燃やしたり、製品をつくる過程で化学反応によってガスが排出されたりするケースが含まれます。つまり、事業者が「自分の手で」直接空気中に出す排出がScope1にあたります。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
1-2. Scope2とは
Scope2とは、企業や組織が購入したエネルギーを使うことで間接的に排出される温室効果ガス(GHG)を指します。代表的な例が電力の使用です。オフィスや工場で使う電気そのものは目に見えてガスを出しませんが、その電気をつくる発電所では石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃やしており、その際にCO2などが発生しています。
つまり、利用者が電気や熱、蒸気を「使う」ことによって生じる排出を、自社の責任として計上するのがScope2です。Scope1とScope2を合わせることで、企業が自らの活動で発生させている排出量を把握できます。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
1-3. Scope3とは
Scope3とは、自社以外で発生する間接的な温室効果ガス(GHG)の排出を指します。原材料の調達や部品の輸送といった「上流工程」、製品の使用や廃棄といった「下流工程」までを含む、サプライチェーン全体が対象です。
たとえば、自動車メーカーであれば、鉄や部品の生産時に出る排出(上流)、消費者が車を運転する際の排出や廃棄処理(下流)がScope3にあたります。企業が算定するGHG排出量の大半を占めるのがScope3であり、Scope1・2だけでは見えない「モノのライフサイクル全体」を把握する上で欠かせない枠組みです。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
2. Scope1~3の算定方法
温室効果ガス(GHG)の排出量を正しく把握するには、Scope1・Scope2・Scope3に分けて算定することが基本です。ここからは、それぞれのScopeの算定方法について具体的に解説します。
2-1. Scope1の算定方法
Scope1の算定では、燃料の燃焼や製造過程での化学反応、冷媒漏えいなど、自社が直接排出する温室効果ガスを対象とします。基本的な計算式は「エネルギーの使用量×排出係数」で、都市ガス・ガソリン・軽油など燃料ごとに環境省が公表する係数を用います。
たとえば、都市ガスの使用量に事業者別の排出係数を掛け合わせることでCO2排出量を算定できます。また、セメント製造のように化学反応で発生するガスは「発生量×排出係数」で計算します。さらに冷媒の漏えいについては、フロン排出抑制法に基づき充填量や漏えい率をもとに算定する必要があります。
対象範囲は自社に加えて連結子会社や建設現場など、所有または支配下にあるすべての活動が含まれます。こうした算定は複雑になりやすいため、環境省のガイドラインや算定ツールを活用することで、効率的かつ正確に排出量を算出できます。
2-2. Scope2の算定方法
Scope2は、購入した電気・熱・蒸気の使用に伴う間接的な温室効果ガス排出を対象とし、「エネルギーの使用量×CO2排出係数」で算出します。
排出係数には2つの考え方があり、1つは国や地域ごとの平均値を用いる「ロケーション基準」、もう1つは電力会社が公表する係数を用いる「マーケット基準」です。ロケーション基準は簡便で、特定の電力証書を考慮しません。一方、マーケット基準は再エネ証書や非化石価値を反映でき、より正確な算定が可能です。
ただし、拠点数が多い企業や海外事業所を持つ場合は把握が難しいため、まずはロケーション基準で算定し、徐々にマーケット基準へ移行する方法が一般的です。電力会社の排出係数には「基礎排出係数」と「調整後排出係数」があり、法定報告では両方の算出が求められますが、CSR報告などでは調整後の値を用いることが多いです。
2-3. Scope3の算定方法
Scope3の算定は、自社以外のサプライチェーン全体における間接排出を対象とするため、Scope1やScope2に比べて複雑になります。算定方法には大きく2つのアプローチがあります。1つ目は、サプライヤーごとに排出量データを収集し、積み上げて算定する方法です。この場合は精度が高くなりますが、取引先が排出データを把握していないと難しい点があります。
2つ目は、自社が把握している購入製品やサービスの物量・金額データに、それぞれの排出原単位を掛けて算定する方法です。こちらは新たなデータ収集が不要で比較的容易に算定できますが、物量データがない場合には金額データを用いることになり、精度はやや低下します。
また、リサイクル材の扱いやフランチャイズ事業者のScope1・2排出量の取り込みなど、ケースによって対象範囲を調整する必要があります。Scope3はサプライチェーン全体を可視化できる点で重要であり、企業の脱炭素戦略に直結する算定項目です。
3. サプライチェーン全体のCO2排出量を算定するメリット
Scope1~3を用いてサプライチェーン全体のCO2排出量を算定することは、環境対応だけでなく企業経営にも大きなメリットをもたらします。
- 自社のコスト削減につながる
排出量の算定によって「ホットスポット」と呼ばれる削減余地の大きい工程を把握できます。たとえば、梱包資材や輸送方法を見直すことで排出量を減らせるだけでなく、資材費や物流コストの削減にもつながります。また、将来的な炭素税への対応という点でも有効です。 - CSRの面からアピールができる
Scope算定に基づく削減活動は、CSRやESG投資の観点からも評価されます。CDPの質問書でもScope3の開示が重視されており、積極的な算定・報告は資金調達や企業価値向上に直結します。さらに取引先との連携を深めることで、共同で排出量を減らす取り組みや新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
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まとめ
Scope1・2・3は、サプライチェーン全体で発生する温室効果ガス(GHG)排出量を整理するための国際基準です。Scope1は自社が直接出す排出、Scope2は購入した電気や熱などによる間接排出、Scope3は原料調達から製品使用・廃棄までのその他の間接排出を指します。
Scope1・2・3を合計することで全体像を把握でき、排出削減の優先度を明確にできます。結果として、資材や物流の効率化によるコスト削減、炭素税リスクの回避、CSRやESG投資へのアピールといった企業価値の向上にもつながります。



