脱炭素先行地域に選定されるメリットとは?選定評価や補助金を解説!

カーボンニュートラルの実現に向け、国は「脱炭素先行地域」という枠組みを設け、地方自治体の先進的な取り組みを重点的に支援しています。しかし、環境政策の必要性を理解しつつも、「自地域でどのように活用できるのか」「選定されると何が得られるのか」といった疑問を抱える方もいるでしょう。

当記事では、脱炭素先行地域の基本的な仕組み、選定によるメリット、補助金の活用例、選定プロセスと要件を分かりやすく解説します。地域の将来を見据えた脱炭素計画を進めるための指針として、ぜひ参考にしてください。

 

1. 脱炭素先行地域とは?

脱炭素先行地域とは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、まずは家庭や事務所・商業施設などの「民生部門」における電力消費に伴うCO2排出を2030年までに実質ゼロとする地域のことです。併せて運輸や熱利用などの分野でも温室効果ガス削減を進め、地域特性に応じた脱炭素と課題解決を同時に実現するモデルと位置付けられています。

国の「地域脱炭素ロードマップ」では、2025年度までに少なくとも100か所で先行的な取り組みを開始し、農村・漁村・都市部・離島などのさまざまな地域で暮らしの質向上や防災力強化、経済循環を実現することが目指されています。地方自治体が中心となり、地元企業や金融機関、住民が協力しながら、再生可能エネルギーの導入や省エネ化を推進し、国の補助制度を活用して計画を具現化する点が特徴です。

出典:環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック(第6版)」

出典:環境省「総合環境政策」

脱炭素先行地域とは?選定条件やプロセス・メリット・選定事例を紹介

 

2. 脱炭素先行地域に選定されるメリット

脱炭素先行地域に選定されることで、補助金や国の支援を活用し、地域の持続可能な発展や新たなビジネス機会の創出につなげられます。ここからは、脱炭素先行地域の選定によって得られるメリットを解説します。

 

2-1. 補助金制度を活用できる

脱炭素先行地域に選定される大きな魅力の1つが、国の補助金制度を活用できる点です。特に「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」は、地方公共団体が民間事業者と連携しながら意欲的に取り組む脱炭素プロジェクトを、複数年度にわたって継続的かつ包括的に支援する制度です。予算規模も年々拡充され、2025年度には通常予算に加えGX予算を合わせて3,800億円超が計上されるなど、国全体で強力に後押しされています。

支援金を通じて、風力やバイオマスなどを含む再エネ発電設備や太陽光発電設備の導入、基盤インフラの整備、省CO2設備の普及などを安定的に推進できるため、財政的な負担を軽減しつつ先進的な脱炭素施策に挑戦することが可能です。こうした手厚い支援は、地域が持つ資源や特性を生かしながら実効性ある計画を実現する強力な後ろ盾となるでしょう。

 

2-2. 持続可能な地域として発展できる

脱炭素先行地域に選定されることは、単なる環境対策にとどまらず、地域の成長戦略として大きな意義を持ちます。自治体・企業・地域住民が協働し、地域特性を生かした再生可能エネルギーの導入を進めることには、雇用の創出や新たな産業の育成、イノベーションの促進といった効果が期待されます。

また、日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しているため、地域で再生可能エネルギーを生み出し利用することは、外部への資金流出を抑えつつ、再エネ販売による収益確保につながります。これにより地域経済の循環が促されれば、安定的な収支改善を実現できるでしょう。脱炭素先行地域の取り組みを通じて、環境保全と地域活性化を両立させ、住民の暮らしの質を高めながら持続可能な地域社会を築ける点は大きなメリットです。

 

2-3. 地域脱炭素に伴いビジネスチャンスが増える

地域脱炭素の推進は、新たな産業や事業機会の創出にも直結します。国は、温室効果ガスの削減を経済成長の機会ととらえ、産業競争力強化や社会変革につなげるGX(グリーン・トランスフォーメーション)を進めています。エネルギー・輸送・製造・生活関連などの14分野の産業を重点的に支援する「グリーンイノベーション基金」はその一環です。

出典:Green Japan, Green Innovation「グリーンイノベーション基金事業概要」

これに伴い、地域では再生可能エネルギー関連事業だけでなく、人材育成セミナーやコンサルティング、低炭素製品の開発・販売など、さまざまなビジネスチャンスが広がるでしょう。さらに、地方自治体が実施する重点対策加速化事業への参画や、リサイクル施設の高効率化といった脱炭素技術導入の受注機会も増加する可能性があります。脱炭素先行地域モデルに選定されることは、地域発の新産業育成と経済活性化の好循環を生み出すきっかけとなり得るでしょう。

 

3. 地域脱炭素の意義

地域脱炭素の推進は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の方針を踏まえ、地域社会が主役となって取り組む成長戦略です。2021年に策定された「地域脱炭素ロードマップ」では、2025年までを集中期間と定め、意欲的な地域から取り組みを広げる「脱炭素ドミノ」を起こすことが目指されています。

脱炭素化は環境負荷の低減だけでなく、地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入によって経済循環を生み出し、雇用創出や防災力向上、暮らしの質の改善といった地域課題の解決につながると期待されています。さらに、ペロブスカイト太陽電池などの新技術の導入も進み、小規模自治体における人材不足や財源不足という課題克服の糸口となることが期待されています。国と地方が協働して政策を進めることで、地域脱炭素が地方創生を後押しし、強靭で持続可能な社会への移行を実現するでしょう。

出典:脱炭素地域づくり支援サイト「地域脱炭素とは」

 

4. 脱炭素先行地域における補助金の活用例

引用:環境省「地域脱炭素推進交付金 事業内容」

脱炭素先行地域に選定されると、「脱炭素先行地域づくり事業」の交付金を活用できます。脱炭素先行地域づくり事業の交付金が支給されれば、自家消費型や地域共生型の太陽光・風力・バイオマスといった再エネ設備の導入、再エネ利用を最大化する蓄電池や自営線、水素関連設備などの基盤インフラ整備、ZEB・ZEHや断熱改修、電動車普及といった省CO2設備の導入に活用することが可能です。また、導入効果を高めるソフト事業も交付対象経費となるため、地域の実情に応じて交付金を有効利用できるでしょう。

 

5. 脱炭素先行地域の選定プロセスと要件は?

脱炭素先行地域の対象となるには、応募から審査・決定までのプロセスを経る必要があるほか、所定の要件も満たさなければなりません。ここでは、脱炭素先行地域選定の流れと基準を解説します。

 

5-1. 脱炭素先行地域の選考プロセス

脱炭素先行地域に選定されるには、地方公共団体が提案を行い、環境省や評価委員会による審査に通る必要があります。具体的な流れは以下の通りです。

1地方公共団体が作成した計画提案書を地方環境事務所に提出し、必要に応じて関係部局の意見を踏まえた上で環境省本省に回付されます。
2有識者で構成される評価委員会で書面審査が行われ、必要に応じて対面またはWebでヒアリングが実施されます。
3選定要件を満たしているかを確認する「確認事項に関する審査」が行われ、基準を満たした提案は次の段階へ進みます。
4「先進性・モデル性」に基づく審査が行われ、全国の模範となる取り組みかどうか、また地域経済循環や課題解決への貢献度が評価されます。
5再エネ導入の確実性や事業性、合意形成など、7つの観点をもとに総合的な審査が行われ、一定の評価を得た計画が脱炭素先行地域として環境省により選定・公表されます。

出典:環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック(第6版)」

 

5-2. 選定の考え方と選定要件

脱炭素先行地域に選ばれるためには、明確な基準に基づく審査を通過する必要があります。まず「前提となる事項」として、合理的に設定された地域範囲や実効性ある執行体制、地方公共団体実行計画の策定状況などが確認されます。

その上で、7つの観点に基づき総合的に評価されます。評価の焦点は、他地域に波及可能な先進性・モデル性を有しているか、地域内経済循環にどの程度貢献できるか、費用対効果や投資回収性を含む事業性に優れているかといった点です。

(2)脱炭素先行地域の選定要件(前提となる事項と7つの観点)

0)前提となる事項

1)先進性・モデル性

2)地域経済循環への貢献

3)事業性

4)取組の規模・効果及び電力需要における自家消費率・地産地消率

5)再エネ設備の導入及びその確実性

6)需要家・供給事業者・関係者との合意形成

7)地域の将来ビジョンとの整合性

引用:環境省「脱炭素先行地域募集要領(第5回)」引用日2025/07/31

さらに、再エネ導入量や確実性、自家消費率や地産地消率、需要家や関係者との合意形成の進捗も重視されます。取り組みが総合計画や都市計画など、地域の将来ビジョンと整合しているかも必須条件です。これらを総合的に判断し、全国のモデル地域が選定されます。

 

まとめ

脱炭素先行地域に選定されることは、自治体にとって環境政策の推進だけでなく、地域の持続的な発展や地域経済効果を生み出す大きなチャンスです。補助金制度を活用することで財政的な負担を抑えつつ、再生可能エネルギーや省CO2設備の導入が可能となり、雇用創出や新産業育成にもつながります。

選定にあたっては、先進性や事業性、地域経済循環への貢献など、明確な要件が定められているため、戦略的な計画の立案が必要です。地域ごとの特性を生かした取り組みを検討し、国の支援を最大限に活用することで、地域の未来を持続可能な形で築けるでしょう。

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