脱炭素化やエネルギーコスト削減の必要性は理解していても、「初期投資の負担が大きい」「自社に合う制度が分からない」と悩む企業は少なくありません。設備更新や再エネ導入は長期的な効果が見込まれる一方で、資金計画や導入方法を誤ると負担が大きくなりがちです。こうした課題に対し、国は民間事業者向けにさまざまな補助制度を展開しています。
当記事では、再生可能エネルギーの普及や省エネ設備の導入を後押しする各種補助金の事業概要や利用要件、補助金額などについて分かりやすく解説します。制度を活用することで投資リスクを抑えながら、脱炭素と持続的な経営の両立を目指しましょう。
目次
- 【2025年】民間企業が使える代表的な再エネ補助金
- 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(1) ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
- 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(2) 設置場所の特性に応じた再エネ導入・価格低減促進事業
- 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(3) 離島の脱炭素化等推進事業
- 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(4) 新手法による建物間融通モデル創出事業
- 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(5) データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業
- 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
1. 【2025年】民間企業が使える代表的な再エネ補助金
2025年は、民間企業が利用できる再エネ補助金制度の選択肢が拡大しています。利用要件や補助金額を理解し、自社の設備導入を有利に進める手がかりを得ましょう。ここからは、代表的な補助金制度の補助事業や事業目的、対象事業者、補助対象設備などについて紹介します。
1-1. 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(1) ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
本事業は、初期費用ゼロでの自家消費型太陽光発電設備や蓄電池の導入支援を図り、ストレージパリティの達成を目指すものです。対象設備は、業務用・産業用施設や集合住宅・戸建住宅における太陽光発電と車載型蓄電池を含む蓄電池の導入で、蓄電池の設置が必須条件となります。また、発電電力を系統に逆潮流しないことが求められます。
補助金は、太陽光発電設備についてオンサイトPPAやリースを利用する場合は1kWあたり5万円、自己所有の場合は1kWあたり4万円です。蓄電池は定額補助で、補助対象経費の3分の1を上限に支援が行われます。
1-2. 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(2) 設置場所の特性に応じた再エネ導入・価格低減促進事業
本事業は、地域の再エネポテンシャルを活用し、地域共生を前提とした自家消費型・共生型の再エネ導入を推進することが目的です。設置場所の特性を踏まえ、太陽光発電や熱利用の導入を促進し、コスト低減と脱炭素化を同時に実現する点が特徴です。
対象事業は多岐にわたります。地域共生型太陽光発電では、生物多様性など自然環境に配慮しつつ営農地や水面を活用した取り組みが支援されます。建物等活用型の事業では、駐車場を活用したソーラーカーポートなどの太陽光発電設備や充電設備の導入が対象です。建材一体型事業では、窓や壁と一体化した太陽光発電設備の導入を支援しています。さらに、再エネ熱利用や工場廃熱利用を進める事業に加え、複数施設や地域間の熱融通など、地域全体でCO2排出ゼロを目指す脱炭素化先行モデル創出事業も含まれます。
補助金は、地域共生型太陽光が補助率2分の1、建物等活用型が8万円/kW、建材一体型が補助率5分の3または2分の1、再エネ熱・廃熱利用が3分の1または2分の1、脱炭素化先行モデルが4分の3または3分の2です。
1-3. 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(3) 離島の脱炭素化等推進事業
本事業は、エネルギーの地産地消を目指す地域で、再エネ自給率の向上と脱炭素化を推進することを目的としています。対象となるのは、再エネ設備や需要側設備を群単位で管理・制御し、離島全体の再エネ比率向上とCO2削減を図る「離島の脱炭素化推進事業」、及びエネルギー地産地消を目指す地域での導入計画策定や、漁業関係者などの理解醸成に資する海洋生態系観測システムの実証を含む「浮体式洋上風力導入と地域ビジネス促進事業」です。
計画策定では実地調査や関係者との合意形成を支援し、観測システム実証では魚類への生態系影響や風況観測などを行い、社会的受容性の高いビジネスモデルの確立を目指します。補助金は、離島の脱炭素化推進事業と浮体式洋上風力導入と地域ビジネス促進事業の双方に対して補助率4分の3が適用されます。
1-4. 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(4) 新手法による建物間融通モデル創出事業
本事業は、建物間での電力融通を可能にする新たな仕組みを活用し、平時の省CO2と災害時の電力確保を両立するモデルの創出を支援します。対象となるのは、民間企業等がTPOモデル(第三者保有モデル)を活用し、太陽光発電設備や蓄電池、需要側省エネ設備、自営線、直流給電網などを組み合わせて、複数建物間でエネルギーシステムを構築する取り組みです。
補助金は、計画策定に対して補助率4分の3(上限1,000万円)、設備等導入に対して補助率2分の1または3分の2が適用されます。
1-5. 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業|(5) データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業
本事業は、データセンターのゼロエミッション化と災害時のレジリエンス強化を進め、デジタル社会とグリーン社会の同時実現を目指すものです。対象となるのは、新設時における再エネ・蓄エネ・省エネ設備の導入、既存データセンターの再エネ・蓄エネ設備導入や省エネ改修、省エネ性能が高く地域再エネの活用も期待できるコンテナ・モジュール型データセンターの整備です。
補助金は、設備等導入に対して補助率3分の1が適用されます。
1-6. 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)
本事業(SHIFT事業)は、工場や事業場における脱炭素技術の導入を促進し、バリューチェーン全体でのCO2排出削減を加速することを目的としています。対象となるのは、工場単位で15%以上または主要システム単位で30%以上の削減を実現する電化・燃料転換・熱回収などの省CO2型システム改修や、複数事業者による共同導入、既存設備への追加導入による取り組みです。さらに、DXシステムを活用した運用改善やデータ分析による省CO2対策、先導的な脱炭素化の継続事業も含まれます。
補助金は、省CO2型システム改修に対して補助率3分の1で上限1億円または5億円(3年以内)、DX型CO2削減支援では補助率4分の3で上限200万円(2年以内)が適用されます。
1-7. 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
省エネルギー投資促進支援事業は、工場や事業場における生産ライン更新などを通じ、省エネ効果の高い設備導入を支援する制度です。事業は大きく3つのタイプに分類されています。
「工場・事業場型」では、先進的な省エネ設備やシステム、事業者の用途に応じたオーダーメイド設備、SIIが基準を定めた指定設備の導入が対象となります。要件として、省エネ率や非化石利用割合の改善率、エネルギー消費原単位の改善率などが基準となり、投資回収年数要件も設定されています。
「電化・脱炭素燃転型」では、産業ヒートポンプや高効率コージェネレーション、高性能ボイラなど、電化や低炭素燃料への転換を伴う設備導入が対象です。「エネルギー需要最適化型」では、エネマネ事業者と連携したEMS機器の導入を通じ、エネルギー需給の最適化を図る取り組みを支援します。
補助率は型ごとに異なり、「工場・事業場型」の先進枠では中小企業が3分の2以内、大企業が2分の1以内で、一般枠では中小企業が2分の1以内、大企業が3分の1以内です。中小企業投資促進枠でも中小企業は2分の1以内の補助率が適用されます。「電化・脱炭素燃転型」は一律2分の1以内、「エネルギー需要最適化型」中小企業が2分の1以内、大企業が3分の1以内となります。それぞれ補助金限度額も設けられているので、詳細は一般社団法人環境共創イニシアチブのサイトなどをご確認ください。
まとめ
再生可能エネルギーや省エネ設備の導入を後押しする各種事業は、地域との共生を前提にしつつ、企業規模や導入方法に応じた補助率・上限額が定められています。発電設備の導入から省エネ投資、電力の効率的な利用、災害時のレジリエンス確保まで、幅広い取り組みが対象となっているため、企業や事業者は自社の状況に合わせて最適な制度を選択することが可能です。
各種補助金を活用することで、設備投資の負担を軽減しつつ、脱炭素化と経営の持続性を同時に高められる可能性があります。自社の業態や規模に適した支援策を見極め、補助制度を戦略的に利用することが、持続可能な経営への第一歩となります。具体的な導入計画を検討し、制度活用による長期的なコスト削減と競争力強化を目指しましょう。


