省エネ設備への更新や、電化・燃料転換による脱炭素化を進める際に活用できる制度の1つが、「省エネ・非化石転換補助金」です。ただし、申請タイプや申請枠によって対象となる設備、省エネ要件、補助率、補助対象経費などが異なります。
補助金を活用するには、自社の取り組みに適した申請枠を把握した上で、指定設備や申請要件、公募スケジュールを確認することが重要です。当記事では、省エネ・非化石転換補助金の概要から申請枠、対象設備、補助対象経費、申請前の注意点まで分かりやすく解説します。
目次
1. 省エネ・非化石転換補助金とは?
省エネ・非化石転換補助金は、省エネ性能の高い設備の導入や、電化・燃料転換などによる省エネ・非化石エネルギーへの転換を支援する制度です。設備投資にかかる費用の一部が補助され、工場・事業場全体で取り組む「工場・事業場型」や、設備ごとに申請する「設備単位型」などがあります。
申請には、事前に導入設備や省エネ効果などを踏まえた計画を立て、所定の要件を満たす必要があります。申請後は審査が行われ、採択された事業が補助金交付の対象です。公募時期や対象設備、申請タイプによって条件が異なるため、導入や契約を進める前に最新の公募要領や手続きを確認しておきましょう。
2. 省エネ・非化石転換補助金の申請タイプ
省エネ・非化石転換補助金には、「工場・事業場型」と「設備単位型」の2つの申請タイプがあります。ここでは、それぞれの特徴や対象となる取り組みを解説します。
2-1. 工場・事業場型
工場・事業場型は、工場・事業場全体を対象範囲として、大幅な省エネを図る取り組みを支援する申請タイプです。取り組みの内容に応じて、次の4つの申請枠が設けられています。
| 先進枠 | 先進的な省エネ設備・システムへの更新を支援する |
|---|---|
| 一般枠 | 工場・事業場全体で行う設備更新や省エネの取り組みを支援する |
| 中小企業投資促進枠 | 中小企業者等による省エネ設備への投資を支援する |
| サプライチェーン連携枠 | 複数の事業者が連携して行う省エネ設備投資を支援する |
各枠では対象となる事業者や省エネ要件、補助率などが異なります。設備更新の内容や事業規模を踏まえ、自社が利用できる申請枠を確認しましょう。
2-2. 設備単位型
設備単位型は、工場・事業場内の設備単位を対象範囲として、省エネを図る取り組みを支援する申請タイプです。導入・更新する設備や取り組みの内容に応じて、次の申請枠が設けられています。
| 電化・脱炭素燃転型 | 化石燃料から電気やより低炭素な燃料への転換を伴う設備の更新・改造や、水素燃料を活用可能な設備の新設を支援する |
|---|---|
| 設備単位型(従来枠) | SIIが指定する省エネ性能の高い設備への更新を支援する |
| GX設備単位型(メーカー強化枠・トップ性能枠) | GXに取り組むメーカーの省エネ型設備や、特に省エネ性能が優れた設備の導入・更新を支援する |
GX設備単位型には、対象となる設備や性能などに応じた区分も設けられています。申請する際は、導入・更新予定の設備がどの申請枠や要件に該当するかを公募要領で確認しましょう。
3. 工場・事業場型で利用できる申請枠
工場・事業場型では、工場や事業場全体の省エネ計画を前提に、設備の種類や事業規模、サプライチェーンでの取り組み方に応じて申請枠が分かれます。ここでは、主な4つの申請枠を紹介します。
3-1. 先進枠
先進枠は、高い省エネポテンシャルを持つ先進設備・システムへ更新し、工場・事業場全体で大幅な省エネを図る取り組みを支援する申請枠です。省エネルギー量は工場・事業場全体を対象に計算し、原油換算量ベースで「省エネ率+非化石割合増加率30%以上」など、所定の要件のいずれかを満たす必要があります。
補助対象経費は設計費・設備費・工事費で、投資回収年数は5年以上が要件です。補助率は中小企業者等が2/3以内、大企業・その他が1/2以内に設定されています。一般枠の補助対象設備を組み合わせて要件を満たすことも可能なため、設備更新の内容と省エネ効果を踏まえて申請計画を立てることが重要です。
3-2. 一般枠
一般枠は、工場・事業場全体を対象に、指定設備やオーダーメイド設備への更新によって省エネを図る取り組みを支援する申請枠です。生産ラインの更新など、事業全体の設備投資に活用できます。省エネルギー量は工場・事業場全体で計算し、「省エネ率+非化石割合増加率10%以上」など、所定の要件のいずれかを満たす必要があります。
補助対象経費は設計費・設備費・工事費で、補助率は中小企業者等が1/2以内、大企業・その他が1/3以内です。中小企業投資促進枠が中小企業者等のみを対象とするのに対し、一般枠は大企業・その他も対象となります。設備単位でも所定の省エネ要件を満たす必要があるため、導入設備の条件も確認しましょう。
3-3. 中小企業投資促進枠
中小企業投資促進枠は、中小企業者等が指定設備やオーダーメイド設備へ更新し、工場・事業場全体で省エネを図る場合に利用できる申請枠です。一般枠と比べて省エネルギー要件が緩和されており、工場・事業場単位では「省エネ率+非化石割合増加率7%以上」「省エネ量+非化石使用量500kl以上」「エネルギー消費原単位改善率5%以上」のいずれかを満たす必要があります。
補助対象経費は設計費・設備費・工事費で、補助率は中小企業者等が1/2以内で、投資回収年数が5年未満の場合は1/3以内となります。また、投資回収年数は3年以上が要件で、SII指定のフォーマットにより一般枠の効果を満たす事業計画書を事前に作成・公表する必要があります。
3-4. サプライチェーン連携枠
サプライチェーン連携枠は、サプライチェーン上の複数企業が協力して設備投資を行い、一体的な省エネ計画のもとでカーボンニュートラルの実現を目指す申請枠です。オーダーメイド設備または指定設備への更新が対象で、各事業者は工場・事業場単位で「省エネ率+非化石割合増加率5%以上」の要件を満たす必要があります。
補助対象経費は設計費・設備費・工事費です。補助率は中小企業者等が1/2以内、大企業・その他が1/3以内ですが、投資回収年数によって引き下げられる場合があります。個社単位では難しい設備投資を複数企業が連携して進められる点が特徴で、サプライチェーン全体で省エネや脱炭素を進めたい場合に検討される枠です。
4. 設備単位型で利用できる申請枠
設備単位型では、導入する設備の種類や目的に応じて、電化・燃料転換を支援する枠や、指定設備への更新による省エネ化を支援する枠に分かれています。ここでは、主な申請枠とそれぞれの特徴を紹介します。
4-1. 電化・脱炭素燃転型
電化・脱炭素燃転型は、化石燃料を使用する設備から電気やより低炭素な燃料を使用する設備へ転換し、設備単位で脱炭素化を図る申請枠です。更新・改造事業では、産業ヒートポンプ、業務用ヒートポンプ給湯器、高性能ボイラ、高効率コージェネレーション、低炭素工業炉などの指定設備が対象となります。
省エネ要件は、省エネ率10%以上、省エネ量1kl以上、経費当たり省エネ量1kl/千万円以上のいずれかです。非化石化を伴う場合は、非化石転換率や非化石使用量も加味して判定します。補助対象経費は設備費・工事費で、補助率は1/2以内です。また、新設事業では、水素燃料を活用可能な指定設備の導入が対象となり、補助率は1/5以内です。
4-2. 設備単位型(従来枠)/GX設備単位型(メーカー強化枠・トップ性能枠)
設備単位型(従来枠)は、SIIが指定する高効率空調や産業ヒートポンプ、高性能ボイラなどの省エネ設備へ更新し、設備単位で省エネ化を図る申請枠です。省エネ率10%以上、省エネ量1kl以上、経費当たり省エネ量1kl/千万円以上のいずれかを満たす必要があり、補助率は1/3以内です。
GX設備単位型には、GXへの取り組みを表明しているメーカーが販売する省エネ型設備を対象とする「メーカー強化枠」と、特に省エネ性能が優れた設備を対象とする「トップ性能枠」があります。トップ性能枠は更新事業に加えて新設事業も対象となり、補助率は更新事業が1/2以内、新設事業が1/5以内です。導入する設備の性能やメーカー、事業内容に応じて申請枠を選びます。
5. 工場・事業場型/設備単位型共通の申請枠
エネルギー需要最適化型は、工場・事業場型と設備単位型の双方に関係する申請枠です。EMSを導入してエネルギー使用状況を把握・分析し、運用改善による省エネにつなげます。ここでは、その仕組みや特徴を解説します。
5-1. エネルギー需要最適化型
エネルギー需要最適化型は、SIIが定めたシステム要件を満たし、補助対象設備として公表されたEMS機器を導入して、エネルギー使用の最適化を図る申請枠です。導入範囲における設備や工程単位のエネルギー消費状況を把握・表示・分析し、その結果をもとに運用改善を進めます。
申請に必要な省エネルギー要件は、原油換算量ベースで2%改善が目安です。また、EMSを活用した省エネの計画を作成し、改善による成果を公表する必要があります。補助対象経費は設計費・設備費・工事費で、補助率は中小企業者等が1/2以内、大企業・その他が1/3以内です。なお、EMSを単独で導入する場合は、工場・事業場型の(Ⅳ)エネルギー需要最適化型に申請します。
6. 省エネ・非化石転換補助金の対象設備と補助対象経費
省エネ・非化石転換補助金は、申請枠によって対象設備や補助対象経費の範囲が異なります。設備名だけで判断せず、SIIが公表する指定設備一覧や公募要領を確認することが重要です。
6-1. 指定設備一覧で対象設備を確認する
省エネ・非化石転換補助金を利用する際は、導入予定の設備が補助対象に該当するかを事前に確認する必要があります。SIIは「指定設備一覧」や「先進設備・システム一覧」を公表しており、対象となる設備・システムはこれらから選定します。オーダーメイド型設備は特注品のため一覧がなく、個別に検討します。
また、対象設備として掲載されていても、発注や契約は交付決定後に行う必要があります。交付決定前に契約・発注した設備は補助対象とならないため、設備の選定だけでなく、申請から導入までのスケジュールも確認しておきましょう。
6-2. 高性能ボイラや産業ヒートポンプなどの対象設備を確認する
省エネ・非化石転換補助金では、申請枠ごとに補助対象となる設備が定められています。たとえば、設備単位型や電化・脱炭素燃転型では、高性能ボイラ、産業ヒートポンプ、業務用ヒートポンプ給湯器、高効率コージェネレーション、低炭素工業炉などが対象設備として示されています。
ただし、同じ種類の設備でも、性能要件や使用する燃料、既存設備の更新か新たな設備の導入かなどによって対象可否が異なります。対象設備の区分は申請枠によって異なるため、設備名だけで判断せず、導入予定の製品が該当する申請枠や指定設備一覧に掲載されているかを確認しましょう。
6-3. 設備費・工事費などの補助対象経費を確認する
補助対象経費の範囲は、申請枠によって異なります。工場・事業場型の先進枠や一般枠、中小企業投資促進枠、サプライチェーン連携枠では、設計費・設備費・工事費が補助対象です。一方、設備単位型(従来枠)やGX設備単位型では、設備費が対象となります。
電化・脱炭素燃転型では、更新・改造事業、新設事業ともに設備費・工事費が対象です。ただし、工事費が補助対象となるのは中小企業者等に限られます。申請枠によって対象となる経費が異なるため、設備の見積もりを進める前に、公募要領や公式サイトで補助対象経費の範囲を確認しましょう。
7. 省エネ・非化石転換補助金を申請する前の注意点
省エネ・非化石転換補助金を申請する際は、公募期間や申請要件、補助対象設備などを事前に確認することが重要です。特に、交付決定前の契約・発注は補助対象外となるため、申請から導入までのスケジュールも含めて確認しておきましょう。
7-1. 公募要領と申請スケジュールを確認する
申請前には、公募要領や交付申請の手引きなどを確認し、必要書類や申請方法、対象となる事業の条件を把握しておきましょう。工場・事業場型と設備単位型は共通のスケジュールで公募され、2026年の1次公募は3月30日~4月27日、2次公募は6月1日~7月9日に実施されました。
3次公募の概要やスケジュールは、詳細が決まり次第SIIホームページで公表されます。また、掲載されている資料は今後変更される可能性があります。申請時には、公式サイトの公募情報に加え、最新の公募要領や交付申請の手引きなどを確認しましょう。
7-2. 省エネ要件・非化石転換要件を確認する
省エネ・非化石転換補助金では、申請タイプや申請枠ごとに満たすべき省エネ要件・非化石転換要件が定められています。省エネ率、省エネ量、経費当たり省エネ量のほか、非化石転換を行う場合は非化石割合増加率や非化石使用量なども確認が必要です。
また、設備単位型やGX設備単位型では、事業者の年間エネルギー使用量などに応じて提出書類が異なります。特定事業者等は省エネ法の定期報告書の写し、特定事業者等以外はSII指定様式の中長期計画書などを提出する場合があるため、自社に必要な書類も事前に必ず公募要領で確認しましょう。
7-3. 交付決定前の契約・発注を避ける
申請前には、公募要領や交付申請の手引きで、契約・発注のタイミングを確認しておきましょう。省エネ・非化石転換補助金では、見積取得は公募開始日以降に行い、補助事業に関する契約・発注は交付決定後に行う必要があります。
交付決定前に契約・発注した事業は、補助金の交付対象となりません。見積取得、交付申請、交付決定、契約・発注、設備導入、実績報告といった手続きの順序を確認し、事業完了期限までに導入や支払いを終えられるようスケジュールを組むことが重要です。設備の納期や工事期間も見込んだ上で、無理のない計画を立てましょう。
8. 省エネ・非化石転換補助金に関するよくある質問
省エネ・非化石転換補助金では、対象事業者や設備、申請枠などに疑問を持つ方もいるでしょう。ここでは、よくある質問をQ&A形式で解説します。制度内容は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトや公募要領で確認してください。
8-1. 省エネ・非化石転換補助金は中小企業でも申請できる?
中小企業者等も、省エネ・非化石転換補助金の申請対象となります。工場・事業場型には、中小企業者等のみを対象とする「中小企業投資促進枠」があり、指定設備やオーダーメイド設備への更新を支援しています。一般枠より省エネ要件が緩和されているため、設備投資を通じて省エネを進めたい中小企業が検討しやすい枠です。申請する際は、自社が対象要件を満たすか公募要領で確認しましょう。
8-2. ボイラの更新は補助対象になる?
高性能ボイラは、省エネ・非化石転換補助金の指定設備の1つとして示されています。ただし、ボイラを更新すれば必ず補助対象になるわけではありません。申請枠によって対象設備や性能要件が異なるため、設備が指定設備一覧に掲載されているか確認しましょう。また、補助事業に関する契約・発注は交付決定後に行う必要があります。対象設備や申請条件に加え、契約時期も公募要領で確認することが重要です。
8-3. 電化や燃料転換はどの申請枠で検討する?
化石燃料を使用する設備から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換を検討する場合は、設備単位型の「電化・脱炭素燃転型」を中心に確認します。更新・改造事業では、指定設備への転換が補助対象となります。また、水素燃料を活用可能な指定設備の新設も対象となり得ます。対象設備や省エネ要件などは事業内容によって異なるため、最新の公募要領や指定設備一覧で確認しましょう。
8-4. 省エネ・非化石転換補助金の最新情報はどこで確認できる?
省エネ・非化石転換補助金の最新情報は、2026年版特設サイトやSIIの公募情報ページで確認できます。公募期間のほか、概要パンフレット、公募要領、交付申請に関する資料なども掲載されています。ただし、掲載資料は今後変更される可能性があります。申請時期によって内容が更新される場合もあるため、申請前には公式サイトで最新の公募情報や資料を確認しましょう。
アフターケアやメンテナンスについてはお気軽にご相談ください。
まとめ
省エネ・非化石転換補助金は、省エネ性能の高い設備への更新や、電化・燃料転換などを支援する制度です。工場・事業場型と設備単位型があり、事業内容や設備の種類、省エネ効果などに応じて利用できる申請枠が異なります。
申請を検討する際は、導入予定の設備が指定設備に該当するかだけでなく、省エネ要件や非化石転換要件、補助対象経費も確認しておきましょう。また、契約・発注は原則として交付決定後に行う必要があります。公募期間や申請資料は変更される可能性があるため、申請前には2026年版特設サイトや最新の公募要領を確認し、手続きの流れに沿って準備を進めましょう。



